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図書館は「知のインフラ」として、市民の知的活動を支える重要な存在だ。しかし、その運営の裏では、非正規雇用の司書たちが低賃金で酷使され、不安定な労働環境に置かれていることをご存じだろうか?
2025年2月19日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で開かれた院内集会では、公共図書館や学校図書館で働く非正規職員の待遇改善が訴えられた。彼らの多くは「会計年度任用職員」という制度のもとで働いているが、その実態は過酷そのものだ。
「非正規制度をつくった人たちを一生恨む」——集会では、そうした悲痛な声が次々と上がった。彼らはフルタイム勤務でありながら月収17万円ほどに抑えられ、正規職員の31万円と比べると、その待遇の差は歴然としている。
それだけではない。
ボーナスの支給が決まったかと思えば、その代償として時給が引き下げられ、年収ベースではほとんど変わらないというケースも報告された。
「これではまるで馬鹿にされている気持ちになる」と訴える職員もいた。
■ 非正規の固定化を生む「会計年度任用職員制度」
では、会計年度任用職員とは何なのか?
この制度は2020年に導入された地方公務員法に基づく雇用形態で、自治体が毎年度契約を更新する仕組みになっている。
本来は、非正規職員の待遇改善を目的として設計されたはずだった。
しかし、結果的には「非正規の固定化」を生むだけの制度になり下がった。
1年ごとの契約更新という仕組みのため、職員たちは常に雇用の不安を抱えながら働かざるを得ない。
加えて、昇給やキャリアアップの道がほぼ存在せず、どれほど長く勤めようとも、安定した収入にはつながらない。
この制度を利用することで、自治体は正規職員を減らし、その穴埋めを安価な労働力で済ませているのだ。
■ 行政の「コスト削減」が生み出した搾取の構図
では、なぜ自治体はこのような制度を乱用するのか?
その最大の理由は、「コスト削減」 である。正規職員を増やせば社会保険や退職金などの負担が増すが、非正規なら短期契約のため、その負担を回避できる。
さらに、1年契約のため、必要に応じて雇い止めが可能となり、自治体にとっては都合の良い「調整弁」として機能する。
特に図書館司書のような職種は、経済的な利益が直接見えにくいことから、住民サービスの質よりも予算削減が優先される傾向にある。
「図書館はそこまで必要ない」「本を貸すだけなら、少ない人員で十分では?」といった短絡的な発想が、行政の判断に影響を与えているのだ。
■ 司書人気が「やりがい搾取」につながる
司書の仕事は、憧れを持つ人が多い職種でもある。
書籍に囲まれ、知識を活用しながら働ける仕事として、多くの人が資格を取得して目指している。
しかし、こうした人気の高さが逆に「やりがい搾取」の温床となっている。
正規雇用の枠が非常に少ないため、仕方なく会計年度任用職員として働く人が後を絶たない。
自治体側は、「この条件でも応募者がいるから、待遇を改善する必要はない」と考え、状況が固定化されているのだ。
■ 非正規では専門職が育たず、図書館の質が低下
本来、図書館司書は高度な専門職である。
書籍の分類・管理だけでなく、レファレンス(調べ物相談)サービスやイベント企画、地域との連携など、多岐にわたる業務を担う。
しかし、毎年雇用の継続が保証されない非正規の立場では、知識やスキルが十分に蓄積されず、長期的な運営計画も立てにくくなる。
経験を積んだ職員が次々と辞め、新人が頻繁に入れ替わる状態が続けば、利用者への対応レベルは当然低下する。
特に、学校図書館では、複数の学校を掛け持ちしなければならない司書が増えており、児童・生徒への十分な支援が行えなくなっている。
■ 行政の動機に問題はないのか?
そもそも、図書館の役割を軽視し、安価な労働力で済ませようとする行政の姿勢に問題はないのだろうか?
公共サービスは、単なるコストではなく、社会全体への投資として考えるべきだ。
図書館の充実は、教育水準の向上につながり、地域の文化や知的資本を高める役割を果たす。
それを単なる「削減対象」として扱うことで、住民の生活の質を大きく損なっているのではないか。
■ 石破政権の「税収は増えても国民には還元しない」方針
さらに問題なのは、石破政権がこのような状況を放置していることだ。
税収が増えているにも関わらず、公共サービスの向上には使わないという姿勢が明確になっている。
2月3日の衆議院予算委員会で、石破首相は、国民民主党が税収増分の国民還元を求めた際に、こう突っぱねた。
「国民のみなさまに税収増分をお返しできる状況にない」
つまり、十分な財源があっても、それを国民のために使う気はないということだ。
「不測の事態に備えて、さらに安定させていく」という考えらしいが、図書館やインフラ整備、修繕など、根本的に必要な公共サービスに回さなければ、国家や国民生活の質は落ちるばかりだ。
■ 石破政権では、この問題はさらに悪化する可能性が高い
石破政権の下では、さらなる公共サービスの削減が予想される。
そうなると、住民がどれだけ声を上げても、「コスト削減」を大義名分に、非正規雇用の固定化が加速し、図書館の質はさらに低下していくだろう。
このままでは、図書館だけでなく、日本の公共サービス全体が崩壊する可能性がある。
「短期的な支出削減」ばかりに固執して「長期的に住みやすい国家」を目指さないこのような政治や政権を、いつまでも放置していて良いのだろうか?
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