· 

『文春叩き』という炎上商法――乗っかる人たち、乗っけられる人たち

 画像の引用元は⇒こちら

 フジテレビと元タレント・中居正広さんをめぐる女性トラブル報道をめぐり、「週刊文春」が一部記事を訂正しました。

 報道当初は「フジ社員が女性を誘った」とされていた部分が後に「実際は中居氏が誘った」という内容に修正されたわけですが、これを機にSNSでは「文春が誤報を流した」という批判が盛り上がりました。


■『文春叩き』に乗っかる人たち

 文春による誤報が大きな問題をはらむのは当然です。

 実際、企業イメージは大きく傷つき、スポンサーが離れてフジテレビ首脳陣は辞任という事態にもなりました。

 誤報を責める声があがるのは理解できますし、「事実誤認によって被害が拡大するのは良くない」という指摘は正当なものです。

 ところが、この「文春叩き」が過熱する過程で、あえて炎上を狙うような“断罪口調”や過激な言い切りばかりが拡散されているのも事実。

 中には著名人までもが「文春は捏造だ!」「責任を取れ!」と強い言葉で糾弾し、何千何万といういいねを集めているケースが見受けられます。

 その姿勢を見ていると、「本当に文春の誤報を冷静に批判しているのか? それとも注目を浴びるために煽っているだけでは?」と感じざるを得ません。

■それは本心か?それとも…?

 そもそも週刊文春が批判される理由のひとつは、「センセーショナルに読者を煽る」報道姿勢です。

 取材が不十分だったり、“衝撃的な見出し”を優先するあまり、裏取りの甘いまま記事を出してしまう。

 結果として当事者が大きく傷つき、社会全体を巻き込んだ混乱を生む。

 そんな問題があるからこそ、文春の手法が問われているのですが――もし「文春を叩く側」も同じように、過激な言い方で閲覧数やリツイートを稼ごうとしているのだとしたらどうでしょうか?

 私たちは、「誤報は良くない」と思うから文春を批判しますよね。

 けれども、誤報に対する糾弾の仕方が、また別の『煽り』や『炎上商法』の形になっているとしたら、その批判には説得力が薄れてしまう。

「文春は炎上を生む手法で数字を稼いでいる」という批判を口にする一方、自分自身がSNSで“断罪の言葉”を多用し、リツイートやいいねを大量に集めている構図があるなら、まるで合わせ鏡のようなものです。


■誤報批判という名の「炎上商法」

 もちろん、誤報の被害に対して声をあげるのは大切なことです。

 事実に基づく厳正な指摘や、被害救済を求める働きかけはどんどん行うべきでしょう。

 ですが、「絶対に許さない」とか「廃刊すべき」といったセンセーショナルなフレーズばかりが先行すると、冷静な検証はどうしても後回しにされがちになります。

 週刊文春が一部を訂正した背景には何があったのか、フジテレビの社内体質は本当にどうなっていたのか、中居氏や被害女性は何を求めていたのか――そうした多面的な事実確認こそ必要なのに、ひたすら「文春叩き」に執心してしまうと、肝心の問題がうやむやになりかねません。

 考えてみれば、誤報への批判と炎上商法は、真逆の立ち位置にあるようで根っこは似ています。

 どちらも大衆の「強い感情」を意識し、それを引き出すことでインパクトを狙い、注目度を上げようとする手法だからです。

 文春の一部誤報で被害を受けた人は間違いなく存在します。

 しかし、それを報道ネタにするメディアや、またSNSの『いいね』を稼ぐための道具にしている人がいるのも現実です。

 そういう姿勢は、やはり「本当に誤報を正したいのか?」と疑問符がついてしまいます。

■結局は、馬の耳に念仏か?

 誤報問題をきちんと批判するなら、まずは「どこがどのように間違っていたのか」「どんな影響が出たのか」など、事実を淡々と示す必要があります。

 そして、文春に限らず、報道機関やSNS発信者がセンセーショナルに煽り立てることで多大な悪影響を及ぼすリスクについて、冷静に論じる必要もあるはずです。

 そこをすっ飛ばして「文春は悪だ!」と叫ぶだけなら、その扇情的な手法は文春が常々批判されてきたものとあまり変わりありません。

 私たちが本当に求めているのは、誤報やデマによって誰かの人生が一方的に傷つけられない社会、そして事実に基づいて改善策が講じられる健全なメディア環境のはずです。

 ならば、今こそ「文春叩き」という炎上商法に乗っかることなく、むしろその裏にある問題を丁寧に見つめたいところです。

 冷静に事実を積み上げ、一過性の『叩き祭り』ではなく、報道の在り方や被害救済の具体的な制度づくりに目を向ける姿勢こそが、本来必要なのです。

 が、などと書いた所で『叩き祭り』に乗っけられる人たちにすれば、そんな小理屈はどうでもいいんだよ…と、『馬の耳に念仏』なのでしょうけれども…。