要約
千葉県が導入を目指す宿泊税(1泊あたり150円)について、浦安市や南房総市などから異論が相次いでいます。浦安市は、宿泊者数の約4割を占める東京ディズニーリゾート(TDR)から得られる税収が「狙い撃ち」と懸念。また、南房総市では低価格の民宿が多く、一律課税が宿泊者や施設に割高感を生むとの批判が出ています。一方で、県はこの宿泊税をコロナ禍で深刻化した観光業界の人手不足対策や、インバウンド(訪日外国人)を増やす施策の財源とする意向で、県課税分だけで年間40億円以上の税収を見込んでいます。修学旅行生への課税や、自治体ごとの上乗せ課税についても議論が続いており、制度設計が焦点となっています。
論評
千葉県が目指す宿泊税は、観光振興やコロナ禍での観光業界の立て直しに向けた重要な財源として位置づけられています。年間40億円以上の税収を見込み、人手不足対策やインバウンド需要拡大を目指す点は、地域経済へのポジティブな影響が期待できます。しかし、その一律課税という設計が地域や施設ごとの事情を十分に反映できていない点が問題視されています。
浦安市では、TDRの観光収益が県の財源として大きく貢献する一方で、地域への還元が十分でないとの懸念が広がっています。このような「狙い撃ち」という不満は、観光政策への信頼を損ねる可能性があり、具体的な還元策の明示が急務です。
また、南房総市の民宿が直面する課題も深刻です。一律150円の課税は、低価格の宿泊施設や長期滞在者にとって大きな負担となり、地域の観光競争力を削ぐ可能性があります。さらに、修学旅行生への課税も波紋を呼び、観光客層の多様性を損なうリスクが指摘されています。
宿泊税の導入は観光地の財源確保に有効である一方、地域ごとの特性を考慮しない制度設計は、不平等感や観光客離れを引き起こしかねません。年間40億円以上の税収が見込まれるこの政策が、持続可能な観光振興につながるためには、配分方法や課税対象を見直し、現場の声に応える柔軟な対応が求められます。
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